茶の香りから

創立者より

キャッスルトン茶園の初摘み茶を馳走になった。
奥様の焼いたパイナップルタルトとの相性が見事だ。
この時期だったのか
四分の一世紀前に高円寺で入れてくれた
アッサムからの初摘み茶を思い出した。
壁や戸が打撃で穴だらけで
粉々に破壊された黒電話が
放置されていた部屋に
新茶の香りが立ち上った。
選ばれた器から茶を口に含んだ。
茶を興じた男、そして久方ぶりに会った男に
私はボソッと言った。
「東京、高円寺の水、合わぬな。
浜の水道水がマシというものだ。
戻ってこい。」
今は東京の水道水も美味しくなったそうだ。
世界中の水も選べる時代でもある。
産湯の水、故郷の水で
病が癒されるなんぞの意識は
蔵入りの時代になった。